森陶岳「生きているやきもの」
森陶岳先生は以前から「生きているやきもの」と云っています。
陶芸雑誌のインタビューで「どうして、森陶岳さんは古備前に拘るのですか?」と質問された時に、「古備前は生きているやきものですから・・・・。 かつて、その時代に人さまのお役に立つ事が出来て、そして今も尚、この時代の人さまに感動を与えて、お役に立てているのですから、古備前は今も生きています。私もそのようなやきものを造りたい。」と答えました。
今日(8月25日)NHKテレビを見ていましたら「生活ほっとモーニング」の中で若い歌舞伎役者・市川海老蔵さんが「300年も400年も生きている役者に成りたいです。」と語っていました。アナウンサーの女性が真意を問うと、未来に於いて何代目の海老蔵はこんな素晴らしい役者だったと人の心に生き続けている役者に成りたいと志しを話していました。楽しみです。
また、ある時に新聞記者さんが「森陶岳さんは今後、どのようなやきものをお造りになって行くのでしょうか?」と質問し、それに答えて「誰が造ったのか判らなくなって、森陶岳と云うものを忘れ去られても、自分の造ったやきものは生き続けて行くようなやきものを目指したいです。」と語りました。
かつて、作曲家・吉田正さんは極寒のシベリヤでロシアによって抑留生活を余儀なくされ、いつ開放され祖国日本に帰れるか知れない強制労働の中で「異国の丘」作り、皆で歌い励まし合って耐えて来ました。日本に帰国してNHKラジオののど自慢で作者不詳の歌として、自分の知らない人によって自作の歌が歌われている事に驚き、また誇りに思ったそうです。晩年に「私の作った歌が、詠み人知らずに成っても、ずっと歌い続けて頂ける歌をこれからも作っていきたい」と語っています。
万葉集の歌の中にヨミビトラズと成っている歌が千年の時を超えて生きています。
モーツワルト、ベートーベン、葛飾北斎、尾形乾山、ゴッホ、ゴーギャン、本阿弥光悦、俵屋宗達
みんな元気に生きています。
時空を超えて、生き続けることは素晴らしい。